自然栽培で作るから畑の虫たちも従業員です
熊本県玉名郡・にしだ果樹園 ~生産者さんを訪ねる その4~

2019.7.24
producer_04_0016
熊本県玉名郡玉東町は、柑橘類や梨などのフルーツ栽培で有名なところである。この周辺のゆったりした土地はオリーブ畑の連なるおだやかなトスカーナの丘陵みたいだ。
producer_04_0178
ここに西田淳一さんが自然栽培と有機栽培でフルーツを育てている「にしだ果樹園」がある。西田さんはこの緑豊かな丘陵に、何箇所かの果樹園を持っている。
producer_04_0092
果樹を育てる上で、特にこだわっているのが「月読み」という陰暦の月の満ち欠けに合わせたバイオダイナミック農法だ。これは月の引力と地球の重力で生じる樹木内の養分、水分の移動に合わせて栽培する農法。西田さんはこの月齢のリズムに合わせて草刈り、剪定、収穫を行なっている。
producer_04_0010
「昔は寺社仏閣の木材は、新月に伐採したものを使ったそうです。新月の時は月の引力が及ぼす力が減り、地球の重力に従って、根の方に水分や鉱物などの養分が下りるので、そのタイミングで切り出された木材自体は自然に乾燥させると腐りにくく、数百年、朽ちない建造物の柱などに使われてきたそうです。反対に満月のタイミングで鉱物が構成する栄養分は上部に引きつけられて、枝の先端に回るので、果実は糖度や香りが高まり、味は緻密で濃くなる。このタイミングで収穫して香味高い果実を収穫します」
producer_04_0167
最初はヨーロッパのバイオダイナミック農法を学んだ。が、ヨーロッパと日本のモンスーン気候は違うから、そのまま真似しても何か違った。「奇跡のりんご」で有名な自然農法でリンゴを作った木村秋則氏からも学ぶ中で、独自の「にしだ流の月読み自然栽培」を確立したのだった。
producer_04_0058
6月初旬に伺ったとき、西田さんは、週末から収穫予定の白桃の果樹園に案内してくれた。小粒だがピンクのきれいな実がたわわについている。果樹園は、下草の雑草も健在。クモの巣やチョウチョ、ハチなどがいて自然そのもの。
「ここは樹齢15年の桃園です。うちでは白桃のはなよめ、黄桃のつきあかりなどを育てています。小玉だけど美味しいですよ。農薬は使いません。農薬や肥料は人間のエゴですから。彼らの生態を学ぶと木自体の力がすごいとわかります。果樹は自分の与えられた環境に素直に反応するので、私たちが肥料を入れすぎると植物は動けないなりに過剰な養分を排出し、それらを動ける虫や動物に吸ってもらうことで、共生環境を創り出しています。虫たちの果樹への関わり方を見ると、果樹園全体の調和がわかる。僕はこれが本当の虫の知らせだと言っています。」
producer_04_0040
「もいでみて。」と言われてとった桃をそのままかじったら果汁がしたたり落ちた。香り高くて甘い!
花が咲き、鳥が鳴き、風通しよく、月々の気候を読み、寒暖差などのバランスを見ながら実りを見守る。果樹の生理を知ることがいい果樹を育てるポイント。人間は全体の調和を取るのが役割だと言う。
producer_04_0108
次にゴールドキウイの畑に案内していただく。こちらは下草を10cm残した状態で刈られていたので整っていた。
producer_04_0106
「キウイは枝を伸ばすのに3,4年かかります。雄株と雌株が必要で、雄1に対して、メス10の割合で植えると繁殖環境がいいんです。枝の先端部分から収穫していきます。
producer_04_0122
一番美味しいのは11月の最後頃に収穫したもの。」
キウイの畑には繊細なクモが巣を張っている。「クモは圏外から侵入する過剰な虫たちを食べてくれるうちの有能な従業員。1年に1回子孫を残すから、このクモで14代目になりますね。」
脱サラして、こちらに戻って来年で20年。帰ってきた時、果樹をオーガニックで作りたくて、直感的なものを信じて作ってきた。
「肥料も農薬も入れないで作ってみると、自然がわかります。大きくなれ、きれいな実をと、肥料や農薬を入れて自分の欲だけで作っていると、わからなくなり、調和を崩していたことに気づいた。1回すべてをやめてみると、益虫のクモやテントウムシが増えていい循環が出てきた。果樹の根っこに草を残すのは、虫たちが潜めるようにするため。共生していってもらいたいからね。」producer_04_0068producer_04_0016
自分の思いもあるけど、果樹そのものの味を伝えたいと思って作っている。「フルーツは嗜好品だから季節の楽しみでしょ? 心の一部、身体の一部になるための作物を作れば、自ずと自然環境もよくなるんじゃないかと。」
お客さんのお母さんたちが小さな子供達を連れてきて、援農することもある。
子供達がフルーツを収穫するイベントもやっている。西田さんの取り組みはこれからの農業の一つの理想的な形だと思う。
果樹園でもいでかじった桃は香り高く、果汁たっぷりで甘みも乗り、小粒なのにものすごく美味しかった。
producer_04_0026
皆さんも機会があれば、ぜひ、訪れてみていただきたい、そして、西田さんのフルーツを食べていただきたいと思う。「或る列車」では西田さんの桃やプラムを使ったデザートを食べられる。それは至福の味だ。producer_04_0172

JR九州 或る列車ツアーデスク

Tel.092-289-1537

営業時間:9:30〜16:00(水曜日休業)