デザートに特化した世界初のスイーツ・トレイン
幻の豪華列車「或る列車」に乗る!

2019.7.5

「或る列車」

「或る列車」とは、明治39年(1906年)、当時の「九州鉄道」がアメリカ・ブリル社に発注したものの、九州鉄道が国有化されたため、新橋駅に置かれたまま活躍する機会のなかった列車を蘇らせた列車だ。
正式名称は「九州鉄道ブリル列車」、通称「或る列車」は鉄道をこよなく愛し、世界的な鉄道模型の神様といわれた故 原信太郎氏が作成した模型をもとに、ななつ星の設計者の水戸岡鋭治氏+ドーンデザイン研究所が作ったもの。
「或る列車」はそういう歴史的な背景と夢のある列車だ。
優雅なインテリアに身を沈め、九州食材を使ったオリジナルのスイーツのコースを楽しめるスペシャルな列車なのだ。

いざ出発

こんな素晴らしい列車はまず体験してみないと始まらない。
ということで、私は、4月の長崎、佐世保間のコースに実車した。
長崎15時37分発、佐世保18時37分着。短い区間を3時間かけてゆっくり運行し、その間にスィーツのコースを楽しむという趣向である。
長崎駅で待っていた「或る列車」は、2両編成という小さな列車だった。外観からしてアンティークっぽくて、ものすごくかわいい! 車両はシックなゴールドとブラックで、車体に施された緻密なデザインが美しい。
列車の前でピシッと身体に合ったユニフォームに身を包んだ乗務員さんたちが出迎えてくれる。この時点でテンションが上がる。
出発の時が来ると、ホームで助役さんはじめ駅員さんたちが小旗を振ってお見送りをしてくれる。車窓から小さく手を振ってみる。なんだかロイヤルファミリーになったような超いい気分である。(笑)
列車はしずしずと発車した。boarding_01_7545

五つ星のホテルみたい!

中に入るとインテリアの豪華さに思わずため息。ほかの乗客の皆さんも「ほ〜っ」と感心していた。
この列車、2両編成なのに、1両ごとに内装がまったく違う。1号車は白とゴールドを基調にしたクラシカルでロマンティックなインテリア。テーブルやチェアはメープル材を使用した明るくソフトな感じ。見上げると天井すべてが格天井になっていて見飽きることがない。なんだかマリーアントワネットになれそうな気分。
2号車は、ウォルナットを使ったダークブラウンの落ち着いた内装。コンパートメント形式になっていてプライベート感ハンパない。廊下と部屋を仕切る扉は福岡県の大川組子が施され、透けて見える座席はまるで中国の王宮の部屋。こちらは楊貴妃みたいな気分になれそう。
デザイン性の高さに加え、本物の素材と技術の粋を集めて作ったからこそ素敵だと思えるのだ。とても居心地のよい五つ星ホテルのような居住性。3時間の旅が楽しみだ。boarding_01_7540

お飲み物は何を?

列車の内装をくまなく見ていたら、「お飲み物は何を召し上がりますか?」と乗務員さんが席にオーダーを取りに来てくれた。
メニューを開くと、4月は「お祝い」がテーマになっている。
内容は、3種の料理がきれいに詰められた季節のお弁当とスープ。そのあとに4皿のスウィーツが登場し、ドリンクメニューは好きなものを好きなだけ頼めるようになっている。
どれどれどんなドリンクメニューがあるの?と見ると、アルコール類はスパークリングワイン、白ワイン、赤ワイン、梅酒。ノンアル類は、紅茶、緑茶、コーヒー、日向夏ジュース、完熟みかんジュース、ミネラルウォーター、炭酸水と豊富な上、コーヒーを除くすべてが九州産。もちろんワインなどのアルコールも九州産である。ここまで九州産食材に徹底しているのはすごい!
もちろん、お弁当もメインのスイーツの食材もほぼ九州産だ。
こんなにドリンクがあると迷うけれど、スパークリングワインをお願いする。女子は泡が好き〜!(笑)
カメラマンの板野氏も同行しているが、アルコールは飲まないので日向夏ジュースをオーダーしている。アルコールとノンアルで「或る列車」に乾杯!

甘い時間

ところで「或る列車」のスイーツとお弁当は東京・青山の名レストランNARISAWAがプロデュースしている。NARISAWAといえば、アジアベストレストラン上位の常連。成澤シェフは、日本の食材を熟知していて、それらを生かした料理を作っている。九州の食材をどう使っているのだろう、興味津々だ。
さっそく4月のテーマ「お祝い」という名称のNARISAWA bentoが出てくる。なめらかな木肌の長方形のお弁当箱は、3つに仕切られ、3種の料理がきれいに盛られている。
・長崎県 桜鯛と車エビのちらし寿司
・佐賀県 みつせ鶏と筍、佐賀県 アスパラガス、スナップエンドウのサラダ仕立て、木の芽の香り
・長崎県 トラフグの柑橘類南蛮漬け
どのお料理も素材の美味しさを生かした上品な味つけ。薄味でこんなに美味しく食べられるのはすごいと思う。素材に最低限の味を入れて美味しくしているのだから。また、盛りつけも美しい。お弁当でこんな満足感を味わえるのは久しぶりだ。
ほぼ同時に、「門出」と名付けられた宮崎県産新玉ねぎのスープも出てくる。新玉ねぎのやさしい甘みがいい。温かいスープ(汁もの)というのは、日本人にとってほっとするソウルフードなのだなと思う。
ちょっとお腹が落ち着いたところで、いよいよ真打ちのスイーツが登場。

スイーツは、4種ある。
最初に出てくるのはカクテルスイーツ。
「爽やか」という名がついている。カクテルグラスに盛られた、熊本産 グレープフルーツと福岡県 ハチミツのカクテルである。素直にグレープフルーツとハチミツを合わせた感じだが、なんとも爽やかですっと喉を通っていく。

次は「お花見」と名付けられたスープデザート。
ふわっと口の中で溶けていくようなもち米のアイスクリームにチェリーソースを合わせたもの。ほんのり甘酒のニュアンスもあり、やさしい味わい。美しい桜の花の枝を模した飾りも食べられるとか。本当に芸が細かい!
メインデザートは、取材に伺った池上農園のあまおうを使った「彩り」。甘みも酸味もあると成澤シェフが気に入り、レストランの方でも使っているという苺とココナッツのムースのハーモニーが絶品。エディブルフラワーをまわりに散らしてあり、女子なら思わず歓声をあげてしまうキュートさ!しかも、見た目だけでなく完成度も高い。まさに動くレストラン!
走っている列車内でデリケートな盛りつけは大変な作業だろう。しかもほとんどのスイーツはここで仕上げをしなければならない類のものだ。
感心しているうちに、最後のミニャルディーズになる。
これまでに、スパークリングワイン、日向夏ジュース、完熟みかんジュース、白ワインといただいて、昼間からすっかりいい気分だ。日向夏ジュース、完熟みかんジュースは香りも甘み、酸味もしっかりした果汁そのものの味わいで九州の食材の豊かさを感じる。
ミニャルディーズになって、紅茶をお願いする。
福岡・星野製茶園さんの紅茶は香り高く、ダージリンのような香りと味わい。でミニャルディーズに合う。「そよ風」という名のミニャルディーズは、熊本産レモンのタルト、熊本産プリンセスほおずき、鹿児島産さつまいもの芋けんぴ。レモンのタルトは甘酸っぱさが魅力、ほおずきはそのまま出てくるのだが、酸味と甘みがあって美味、さつまいもの芋けんぴは、細くカリカリに仕上げてあり、世の中の芋けんぴがこうだったら、どんなにファンが増えるだろうと思う理想的な芋けんぴである。
菜の花や桜、新緑など春の景色が流れていく中をゆったりと列車は走っていく。大村湾の美しい夕景に変わるのを眺めているうちに、列車は佐世保に到着。ずっとこのまま乗っていたい!目的地まで行くために移動するのではなく、列車にいる時間を楽しむ「或る列車」はそんな魅力に満ちた列車だ。boarding_01_7544 boarding_01_7542 boarding_01_7551boarding_01_2108

JR九州 或る列車ツアーデスク

Tel.092-289-1537

営業時間:9:30〜16:00(水曜日休業)