九州にりんご?苦節40数年の美味しいりんご作り
福岡県嘉麻市・九州りんご村「華香園」
~生産者さんを訪ねる その14~
2020年1月22日

九州でりんごを作っている?実際に作られているのだが、ご存知の方は少ないのではないかと思う。私も話には聞いたことがあるけれど、りんごは寒いところのもの、本当に作られているの?と半信半疑だった。でも今回、たわわになっているりんごを見て、本当に九州にりんごはあるのだと納得。
りんご村への道中はずっと、深い山々の連なっている景色が続く。取材に伺った日は曇っていて濃霧が立ちこめ、10月なのに空気が冷たい。

それもそのはず、ここは福岡県にある標高997mの馬見山の中腹に位置し、自然に囲まれた斜面10ヘクタールの畑なのだ。九州では涼しいところだから、りんごが作れるのである。
りんご作りをしている華香園の森徹夫さんにお話を聞く。

「このあたりはもともと梨の産地で、梨は曾祖父さんの代の100年以上も前から作っていました。が、小さなエリアだし、ブランドとしては弱い。そこで新しい産物を作ろうという気運が生まれて、九州では非常に少ないりんごを栽培しようということになりました。親父の代から始めてもう40年以上たちます。私は長野県に1年間りんご栽培の勉強に行きました。戻ってから学んだ通り作ってみても、なかなかうまくいかない。長野県や東北地方に比べると、こっちは日差しが強く、湿気が多いんです。果実に袋をかけないと焼けてしまう。だから、ほとんどのりんごに袋がけするなど栽培には手間ひまがかかりますね。」
こうして試行錯誤しながら40数年の歳月をかけて、今では九州最大のりんごの産地になった。

りんごは、ほぼ市場には出荷せず、主に観光りんご園としてりんご狩り用、また直売所での販売、地方発送などの直販が主体だ。
栽培しているのは、甘味が強く、酸味がしっかりした新世界、酸味が強くかたくて大ぶりな陽光、甘くて人気のぐんま名月、シャキシャキしたふじ、そして香りの良い王林など多品種である。



りんごの中では、ふじは剪定や肥料のバランスが崩れたら実らないので、作るのが一番大変だそうだ。


「観光もぎ取りや、直販が中心なので、安心安全にこだわります。有機質肥料を使った土作りや、減農薬で作り、化学肥料は使いません。福島から田川に来てりんご作りをしている名人の方に、農薬は最低限まで減らしても大丈夫だと教わったのでできる限り使わないようにしています。また、ここは大生産地ではないので個人対応を細やかにしています。たとえばご要望に合わせていろいろな種類のりんごを詰め合わせて送ったりとか。」

りんご畑に案内していただいた。

りんごの木は低めで実がもぎ取りやすいように仕立てられている。観光りんご園なので子供ももぎ取りやすいようにしているのだという。少量多品種栽培なので、様々なりんごをもぎ取れるのも楽しいだろう。


好きなりんごを取っていいですよ。と言われたのでおすすめを聞くと「その黄色のはるか、ですかね。娘と同じ名前なんです」とニッコリ。もいでかじるとジューシーで歯応えがあり、香り高く、とても美味しい。

「或る列車では九州産の産物を使うということで、九州でりんごを作っているうちに問い合わせが来て、スィーツに使っていただけて励みになっています。或る列車では、12月にふじを使っていただいているんですよ。」と森さん。
九州でりんごをもぐことができるとは思わなかったけれど、赤や黄色のりんごを見て、甘酸っぱい香りが立つと幸せな気持ちになる。九州随一のりんごなのだ。

